写真集発刊に寄せて

公益社団法人 日本写真家協会 (JPS) 会員
一般社団法人 二科会写真部 理事長
森井禎紹

 山本様、凄いの一言ですね。驚嘆の気持ちで一杯です。97歳のご高齢でのご出版、心よりお喜び申し上げます。先人いわく「人には歴史がある」山本氏は大東亜戦争に出兵、極寒のシベリアに抑留され過酷な生活を送られ、岸壁の母の舞鶴港に帰還されました。その後仕事一途に精を出し、ほっと一息ついたのが70歳の時でした。70歳の手習いでと始められたのが写真だったのです。写真歴27年間という短い期間に、コンテストの応募に生き甲斐を感じ、写真に魅せられていったのです。数々のコンテストへの応募の入落に一喜一憂、感動の虜になっていったのです。「写真は写歴ではなく、その中味だ!!「こんな言葉を再確認した気持ちです。
 圧巻は日本最大の公募団体二科展において10回の入選・入賞を果され、その実力が評価され二科会写真部会友に推挙、そして第65回二科会写真部会友300名の中から唯一5名に贈られる「会友賞」を受賞されました。年老いた女性をポートレート風に捉えた「年輪」のタイトルで、自分と被写体を重ね合わせたそんな力強い作品でした。
 今回の写真集「グランド北海道」は27年間に30数回も足を運び、現在も年2回程度行かれています。北海道の様々なジャンルの被写体にチャレンジされています。道東を象徴する鳥達や動植物、人々の暮らし、雄大な風景等を7つのジャンルに分けて大変見やすい構成に仕上がっています。コンテスト主体の作家らしい基本が忠実で「被写体の切り取り」「シャッターチャンス」「光の扱い」「色彩感」等々、見応え充分なものばかりです。一期一会を見事に捉えられています。
 山本氏の写真集から我々に訴えているようです。
 「目標を失うと、生きがいも失いますよ!」「もっと頑張りなさいよ!」と…

「老いて益々…」山本氏に与えられた称号でしょう。